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表面波探査による改良地盤の品質検査


改良地盤にたいする品質検査の必要性
●基  礎 建築工事では、「終わりよければ、全てよし」というわけにはいきません。足下から順に造り上げていくという工事過程において、安全を確保するために重要な工事は最初に集中しており、初期段階における瑕疵は致命的であるといえます。
何事においても基礎は大事といいますが、住宅に関しても同様であり、その基礎を支持するための改良地盤であれば、その重要性は明白です。
●安  全 住宅の安全を確保する上で重要な役割をはたす基礎に関しては、大手ハウスメーカーや一部工務店および保証会社などでは、現地にて第三者による検査を実施しています。
その基礎を支持するめに生成された改良地盤について、同様な品質検査が行われているかといえば、実際にはほとんど行われておりません。
安全確保のためには改良地盤に関しても十分な品質管理が必要です。
●信  頼 建築工事に際し、地盤改良工事は当該物件における最初の工事となる可能性が高く、また、その位置づけは、基礎下の支持地盤を生成するという極めて重要なものです。
その地盤改良工事における品質管理については、お客様にとっても重大な関心事項であると思われますので、徹底した品質管理体制を知って頂くことにより、お客様との信頼関係はより強固なものになるでしょう。



地盤改良工事の報告書
●地盤改良工事報告書
 改良地盤に対する品質確認について、現状では工事後に請負業者より提出される報告書によって確認できます。また、その内容は主に以下のような資料により構成されています。
 @工事現場における写真一式(工事前、工事後、搬入された固化剤の写真など)
 Aフェノールフタレイン反応による固化剤の混合状況の確認(写真)
 B一軸圧縮試験結果

●一軸圧縮試験実施時の基本的な方法
 発注者側施工管理人の立ち会いの下、施工時に一軸圧縮試験用サンプルを6本以上採取し、2週目で3本試験し、平均値を求める。4週目で残り3本を試験し、平均値をとる。以上の結果をもって試験結果とし、改良土の固化状況を判定する。

●品質確認の難しさ
 地盤改良工事報告書により、現地の土とセメントの混合により、どれくらいの強度が出ているかということは確認はできます。
 しかしながら、一軸圧縮試験は、あくまでも現地から採取したサンプルに対する室内試験であり、その試験結果をもって、現場ごとに異なる自然環境の中で養生されている改良地盤本体の品質(強度)も同様であるとは言い切れません。
 また、室内試験では、改良地盤本体におけるもうひとつの品質(改良厚)、についての確認ができません。フェノールフタレイン反応による確認で、改良深度までセメントが混合されていることは確認できますが、その深度において、十分な強度が確保されているのかということは判りません。

●工期と安全確保
 一軸圧縮試験に時間がかかるのは上記の通りです。従って、表層地盤改良工事が発生した場合、下記、いずれかの対応を採ることになります。
 @最終報告が上がってくるまでの約1ヵ月間、着工しないで待つ
 Aリスク覚悟で最終報告を待たずに着工する
 B別途、改良地盤本体を検査し、安全確認ができ次第、すみやかに着工する



改良地盤のイメージ
●設計上および一般にイメージされている改良地盤です。
●一般的な現場品質における改良地盤のイメージです
●部分的な改良厚に差がある場合の改良地盤のイメージ
■ 設計図面上の改良地盤 ■
一般的には上図のような直線で区切られたきれいな仕上がりをイメージしますが、工業製品や、基礎工事のように型枠にコンクリートを流し込んで造るものなどとは違い、現地にてパワーショベルなどを用い、固化剤を撹拌し、土を固めていく作業ですので、表面こそ、きれいに仕上がりますが、改良地盤の下や側面は設計図どおりのきれいな状態という訳にはいきません。
■ 一般的な改良地盤 ■
設計図どおりの品質(強度および改良厚)を確保すべく、余裕を持って多少深めの位置まで改良工事を行う傾向にあるといえます。隣地との距離に余裕がない場合などには、改良地盤の隅における改良厚は中央部に比べ、薄くなる傾向にあります。
※設計上の改良厚を満たしていれば、僅かな差については許容範囲内の誤差であるといえます。
■ 不均一な改良地盤 ■
設計上の改良厚を満たしていれば、大きな問題にはならないかもしれませんが、改良厚不足といった場合には深刻な問題となります。
また、上図の改良厚は、2階部分が薄く、平屋部分が厚いというバランスの悪い状態になっています。強度は十分に担保されているとしても、将来的に事故が発生する可能性が高いといえます。



品質検査の実施時期および検査方法
●実施時期
 表層地盤改良の場合、最低1週間以上の養生が必要であり、これより養生期間が短いと、ねらいの強度になっていない場合があります。また、7日間でねらいの強度に達していない場合は、4週間経過してもねらいの強度になることは少ないといえますので、住宅建設に要する工期との兼ね合いも含め、7日間以上養生した後に、検査を実施するのが良いと思われます。

●調査方法
 一般的な住宅地の地盤調査を安価に実施できる代表的な調査方法として、スウェーデン式サウンディング試験(以下、SS試験)と表面波探査があげられます。
 SS試験は調査機器・器具が安価なため、調査を安く提供でき、計測データの解析に熟練を要しないという理由からSS試験を取り扱う業者が多く、宅地の地盤調査においては主流となっていますが、改良地盤の検査に関しては、適した方法ではありません。

●SS試験
 SS試験はスクリューポイントの付いたロッドに100kgfのおもりによる負荷をかけ、地面にねじ込んでいき、地盤の強度を測る手法です。よって、以下にあげる3点により、改良地盤の調査に用いるには問題があるといえます。
@SS試験では、生成した改良地盤に穴をあけ、改良体を一部破壊することになります。補修により破壊箇所が改良地盤に与える影響をなくすことはできても、宅地用の小さな改良体に対し、何カ所も破壊し検査することが良いことなのかという点
ASS試験で簡単に調査できるような改良地盤に、十分な強度(設計段階で要求されている強度により異なる)が見込めるのかという点(SS試験で検査するのであれば、工事終了後、数時間以内に行わないと貫入できなくなってしまうはずです)
BSS試験では改良厚を、10p未満のオーダーで判定することが困難である点

●表面波探査
 表面波探査は、地盤を伝わる振動の伝播速度と深度を地表面に設置した検出器にて計測するものですので、一度生成した改良地盤を破壊することなく、調査することが可能です。
 改良厚は計測データそのままに評価でき、地盤強度は速度から求められます。表面波速度とN値の相関性はあまりよくありませんが、表面波速度と一軸圧縮強度の相関性は比較的良いとされています。



表面波探査による改良地盤の品質検査
●検出器の設置
 表面波探査において、計測するのは検出区間を通過した振動の周波数およびその位相(時間差)です。よって、検出器は決められた間隔をおいて正確に設置する、あるいは設置時の間隔を正確に記録しておかなければなりません。

●伝播速度および深度
 計測した波の周波数、位相(時間差)、検出器の間隔(距離)と下記関係式により、改良地盤の評価を行います。
 @速度=距離/時間
 A波長(λ)=波の位相速度(V)/周波数(υ)
 B深さ(D)=波長(λ)/2

●品質の確認
 上記計算式で求められた速度と深度を解析することにより、数pの誤差範囲で改良厚を判定できます。
 上記計算式で求められた速度と深度から深度区間における区間速度を算出、区間速度から改良地盤の強度を求めます。
 以上、2点(改良厚、改良地盤強度)の確認をもって、改良地盤の品質検査とします。



改良地盤の品質検査事例
●地盤改良工事前の計測データおよび調査状況
●地盤改良工事後の計測データおよび調査状況
●改良地盤の推定断面図にて、改良厚と改良地盤の強度を示す
■ 改良前サンプル ■
○地盤があまり良くない地域の改良前計測データ
○何十年もの間、庭として使用されたいた土地のデータであり、地盤表層部は植木の撤去等により緩んでいる。
○計測データに顕著な変化がなく、盛土部と下部地盤の境界は判別しにくいが、このデータでは1m弱が盛土部であると思われる。
■ 改良後サンプル ■
○左記の土地における改良後の計測データ
○データに大きな速度変化が見られる部分に改良地盤と下部地盤との境界がある。
○改良地盤の下端付近の土が工事の影響で乱されており、厳密な境界は判定できないが、ここでは、地表より約1mまでの区間が改良地盤であると判定できる。
■ 改良地盤の推定断面図 ■
○第1層(赤)は改良地盤であり、十分な強度が確認できる。
○第2層(橙)は改良地盤であるか下部地盤であるかを断定できない部分であり、両者の境界が存在している。強度は第1層に比べ小さい。
○第3層(緑)は改良地盤下の下部地盤。改良工事後の調査では下部地盤における正確な強度は判別できない。






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